景気の現状

日本の景気が良くなっていると伝えられている。
しかし、庶民の生活においては、あまり実感がない。

かつて、景気が良くなると給料が増えたりと庶民の生活に豊かになった実感があったが、今日の経済の成長率と生活感の間には大きな差があるように思えてならない。
それは、統計学上の建前と、リストラや就職難にあえぐ生活とのギャップがあまりにもはなはだしい差となって現れているからではないだろうか。

私は小泉首相のやっている政治のパフォーマンスを批判している。
それは就任当時から未だに変わらない。
国会の答弁等など、小泉首相のはぐらかしの才能は、歴史上まれに見る才能であることは認めよう。
しかし、物事をはぐらかし、パフォーマンスに終始する行動は、次第に国民の中に浸透し、その場限りをうまくやればいいという風潮になってきている。
私は政治の問題について深く関心を抱くが、最近は国会の討論や政治の問題に対して、全く興味を失っている。
このことは私だけでなく、投票率等を見れば明らかに、国民の大半以上の人が政治を見放し、独自で生きていく準備をしている状況が随所に見受けられる。
また、経済の勝ち組の人達の意見を聞いていると、成功した要因は政府や政治に頼らず、独自で改革路線を構築したから成功した、とうそぶいている。

今、日本の税金を使い、為替相場を円安に持っていくために大規模なドル買いを実施している。
表向きは輸出産業の保護のため日本の景気回復を軌道に乗せるという考え方で、アメリカの国債を20兆円近く購入し、すでに8兆円から9兆円が焦げ付いている。

トヨタ等日本を代表する自動車業界の輸出に関し、円安にするメリットは理解できるが、円高になったメリットはあまり論議されていない。

今回牛肉のBSEの問題で、いかに日本の外食産業が輸入に頼っているかを見て驚いてしまった。
60パーセントを超える牛肉が輸入されているのである。
また鶏の病気が報道され、輸入停止が実施されると、これも60パーセントを超える量が輸入されている実態が浮き彫りになった。

日本の食糧の60パーセント以上が輸入であって、円高が進むと庶民においてはメリットを享受できるのに、一部の大企業の輸出の利潤を守るために、20兆円を超える為替介入のやり方が正しいのだろうか?
為替の変動は投機の動きがあったとしても、上がれば下がるし、下がればまた上がるという自然な形のものであって、いたずらに一部の利益団体を考えての介入について、はなはだ疑問である。

現在の景気は、中国の驚異的な経済成長のおかげである。
造船においては、50パーセントも増えたと報道され、政府も鼻高々だが、それでも韓国には負けている。
世界中が中国の経済成長に振り回されて高成長を遂げているが、内需の人々においては、本当にメリットがあるのかどうか疑わしい。
私の会社も、中国の会社から見学に来たいという申し入れや、バングラデシュ等からも提携の話があったり、大型の装置の問い合わせも増えてきている。

前回書いたが、茨城県の製造メーカーの工場を訪ねてみて、ほぼどの会社も注文は満杯で、5月以降の見積りは出せないほどの盛況である。
急に盛況になったので、さぞかし儲かっているのだろうと思ったのだが、どっこい、原材料をはじめ加工賃が急騰して、利益に直接跳ね返ってこないという。
また、弱小の製造工場にいたっては、材料そのものが手に入らなくて、非常に苦労している。
この私の営業日誌を韓国で見て電話をいただいた。
韓国でも鉄の値段は2倍に跳ね上がっているという。

アメリカに調査をするために派遣した水野君の報告は、アメリカの製造装置のクォリティは格段の品質が向上しているという驚きの声だった。
アメリカは日本ほど中国に影響されていないのか、比較的のんびりしているという。

大型装置に関しては、当面はアメリカで製造装置のフレームを作り、電気周りに関しては日本で作るという分業の製造体制を確立する。
これが当面の経済状況を乗り切る一つの手立てになるだろう。

現在、矢継ぎ早に大企業から大型装置の見積もり依頼を受け、膨大な量の資料を作成して提出する仕事を続けている。
資料、資料、資料の山で、これでは日本の製品のコストが高くなるのは当たり前だと実感している。

冒頭でも述べたように、本音と建前の社会で、7パーセントの経済成長という、にわか景気の感を抱かせる報道が伝えられているが、実態は非常にコスト面では厳しく、大手さんの値切り交渉には大変な力の入れように、(変な形だが)感心している。

正直なところ、本当は誰も儲かっていないのではないだろうか?

海運業界においては、未曾有の収益を得ている。
ここ数年間の間に、30数隻の船舶を製造する計画であるという。
中国向けの輸送量が多いために船が足らないためだそうである。
未曾有の収益とは相反して、莫大な投資を行い、世界最大の海運会社となっている。
しかし、オリンピックを過ぎても、本当に中国の経済がこのまま伸びるのかは疑わしい。

せっかく、日本経済が停滞して企業優先の考え方から生活優先の考え方が少し芽生えてきたのに、またバブルの再炎の様相を見て、危機感を感じてしまう。
パフォーマンス優先の今日であるからやむおえないが、私は病気の身体で経営を続けているため、このような風潮には組しない形で進みたいと思っている。

最近、大手の見積り依頼が増えてきたので、手形の決済も必要になってきた。
今まではほぼ趣味で会社をやっているので開発の仕事をメインにしてきたが、スタッフも少しずつ増えてきたので、少し売り上げアップが必要になっている。
そのために手形をわってもらうために、地元の銀行に融資の交渉を開始した。

私の会社は小さな売り上げで細々と運営しているので、全て自己資金で経営している。
政府系の金融機関から300万ほど借りているが、ほぼ無借金経営できているが、これがどっこい、こうした経営態度は今日の資本主義経済の形から見れば、全く信用のない会社になるらしい。
つまり、銀行から借金をしてそれを返済し、また借金をして返済していく、こうした会社経営が、信用の元になるというのだ。

私は借金せずに新しい技術や新しい製品を開発し、それを理解してくれる方々に販売する、分相応の経営をするのがベストだと思っている。
成長や借金を前提にした会社経営は、本来の21世紀の会社経営ではないと思うのである。

ここに、銀行に借金のする難しさを中小企業の人のために少し書いておく。

現在、4月にNPO法人を立ち上げる準備を進めている。
その会社の主旨は、表向きは安全な水を考える会という名称で設立するが、本音は個人で起業を考えている人たちにコンサルタントを施し、実際の水の設備や技術を習得させ、個人で生活できるような会社を作る目的で運営したいと考えている。

私も10数年、水の仕事を手がけてきたが、本来この仕事は零細企業や個人の人達が取り組め、飲料水から排水まで、純水から超純水まで、非常に幅の広い分野に広がる業種であり、誰でも少し勉強すれば、取り組める業種だと思っている。

日本政府、政治家、学者や有識者達は、起業の大切さを論じたり、ベンチャー企業の育成を叫んでいるが、銀行等に相談に行っても100パーセント門前払いで、表向きでは「開業資金をお貸ししますよ」といっても、実を返せば非常に融資を受けることは困難になっている。

私のように、銀行から借金したことのない会社も同じで、今回、非常におもしろおかしい体験をした。

銀行の方から融資の電話が私の携帯に入ったので、とかく融資を受ける前に私の会社の実態と、作っている製品を見て欲しいとお願いした。
仕事の内容を理解されずに融資されても意味がないので、私たちの商品の価値を見て、融資額が決まればうれしいことはない。
銀行は(おべんちゃらだろうが)「よく自己資金でここまで進んでこられたことに驚いた」と一応の評価をしていただいた。
また、「この種の仕事は借金よりインベスターとして投資家から資金を得るのが正しい姿でしょう」と少し皮肉がかった言葉もいただいた。

そしてその後、「まず、会社の定款を用意するように」と言われた。
新しく会社を作る人は覚えておいたらいいと思って書いておくが、自分で会社の設立をするより、ほとんどの人は司法書士、会計事務所等に依頼して、会社を作ってもらうだろう。
私も全部専門家に依頼して作ってもらったために、会社の定款と会社の登記簿との差までも知らなかった。
会社の登記簿を銀行に持っていくと、定款が必要だという。

そこで、会計事務所に定款の所在を確認すると、法務局に行けという。
法務局にいくと、公証人役場に原本があるので、その原本を探せという。
私もだんだんおもしろくなってきて、会社の定款の原本の在り処を調べることにした。
別に銀行からお金を借りるために、原本の調査を始めたのではない。
なぜこんな書類が必要なのか、そのことに興味があった。

浦安に本店があるために浦安の法務局に行くと、すでに市川大野という田舎に移転していた。
目が見えない私が電車で市川大野に行ってタクシーに乗り、法務局に着き、法務局の係の人に原本の有無を聞くと、法務局には定款の資料は保管されておらず、公証人役場にあるという。
法務局での書類の保存期間は5年間で、公証人役場の書類の保存期間は20年であるから、探せばどこかにあるというのだ。
十数年前の担当者はおらず、麻布、赤坂、新宿、四谷、芝、各種の公証人役場を回り、定款の原本の在り処を調べた。

私は疲れ果て、ある公証人役場の人になぜ銀行からお金を借りるのにこうした資料がいるのかと尋ねてみると、理由は全然分からないという。
結論すれば、銀行は過去のルーツを調べ上げ、現在と過去を調べたいらしい。
これほどまでに、過去の資料を揃えないと融資ができない銀行が日本の経済社会を本当に支えられるのか?
特に中小零細企業を育成する仕事には向かない組織だと思う。

カネボウやゼネコン各社の何百億何千億の債務をチャラにしたり、アメリカにタダ同様で銀行を売却して7兆円ほどの公的資金をぶちこんで、今回株式上場すれば、約1兆円ほどの利益を得られるような奇奇怪怪な金融行政が行われている。
それに対して、零細企業が小額の融資を受けるために、どれほどの障壁があるか、本当におもしろい経験をした。

最後に銀行と大もめをした。
3パーセントの利子の高さについてである。
これではまるで高利貸しと一緒で、最初半年間融資を受ける予定を、1ヶ月に縮めてもらった。
別に世の中全て平等だとは思わないが、銀行の本来の使命はお金を貸して、利ざやを稼ぐものではないだろうか。
銀行から借りて金利を払うものであり、平等な関係が理想である。
しかし、まだまだ「貸してやる、調べてやる、信用はしない」、こういった前時代的な営業感覚がこれほど銀行を痛めつけたのに、少しも変わっていないことを嘆かわしく思っている。

今日、プールの水を純水に近い透明度で浄化したいという相談があった。
前回はたぶん冷やかしだろうと軽く返答していたが、少し前向きなようなので、私たちも前向きに取り組もうと思っている。

あと数週間で、完全な自動制御で逆洗ができる時間4トンの装置が完成する。

熱交換器、純水殺菌装置、大型中空膜4本を装備した新しい装置を使って、プールの水を浄化する世界で初めての仕事に挑戦しようと思っている。
私はこの仕事は非常に価値のある仕事だと思っている。
塩素ガスの中、汚れた水で水泳やスポーツをするという劣悪な環境を是正できるし、温泉やスーパー銭湯の温水を浄化できる優れものになると思う。

大手の注文のために、手形をわる準備をしたり、会社の経営の背伸びをするために銀行に融資の依頼を働きかけたりという努力をするより、身近な子供たちのプールや、道後温泉に今回塩素を入れるという愚かな行政の人達に新しい殺菌方法を教えるために、地道な仕事をしたいと思っている。

最近の風潮として、私も時代の流れに流されそうになっていたが、原点に戻って誰にどんな批判をされようが、売り上げは小さくても自己資金の中で堅実に中国の成長にも影響されず、内需に焦点を絞って着実にビジネスの幅を広げたいと思っている。